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■ ソラの終想 ■
 

――気が遠くなるような遠い過去より、遥か彼方の果てしない未来へ。

一面の漆黒を彩る、無数の星々の光芒。
誰に向けるでもない「存在と」いう命の輝きを、いつ届くとも知れない宇宙の果てへと送り続ける。

あまりに眩しく、またあまりに暗く。
静寂に満たされたその海を、一隻の舟が進みゆく。
それは「舟」と呼ぶには奇妙な姿をしていた。
星団ほどの大きさもある巨大な翼を広げ、ゆったりと揺らめく長い尾はまるで伝説の竜や鳥を連想させる。
けれどもそれら生命体の名を知る者は、広大なこの星の海にもはや存在せず。
今は失われた星を拠り処とする無数の魂を乗せて、舟は静かに進みゆく。
だからきっと、その舟は方舟にして墓標。
去りし命の揺りかご。

舟の導き手はただ一人。
数多の星々は、彼女を「ソラ」と呼ぶ。
かつて数え切れない命を育て、愛し、その生死と歴史とを見つめ続けた。
百億もの時を刻み全てを綴り終えた彼女はどこまでも小さく、白くて。
抱え切れぬ追憶と残された祈りとを舟に乗せ。
ソラは最期の旅に出る。

星仲間の中でもとりわけ小さな少女だった彼女は、
けれど誰よりも豊かで多くの心を育んだ。
色鮮やかな宝石箱のようだった彼女の庭は、けれど今は昔の記憶。
全ては終わった過去の思い出。

それでもソラは寂しいとは思わない。
無数の命が残した数知れぬ夢と祈りは、全て彼女の心のうちに。
星から生まれた意識は、やがて星へと還る。
そして星の意識は、いつしか宇宙に還る。
宇宙より生まれたソラもまた、この宇宙(そら)へ還る。
初めから定められた運命。持って生まれた宿命。
けれど、それは次なる生の始まり。次なる夢の始まり。
ソラは静かに微笑む。眩しい仲間達の輝きを受けながら、新たなる出会いを夢見る。
そうして彼女の「星舟」は母なる故郷を静かに進みゆく。

こんなにも広い宇宙の片隅で彼女が歌う魂の記憶は、どこまでも眩しく、鮮やかで。
だからこそ、星仲間は彼女が描いた軌跡をきっといつまでも覚えている。
この宇宙が終わるまで。新たな宇宙が始まった後も。

やがて宇宙を越えた世界にも歌い継がれてゆくであろう――
それは、優しいソラの終想。
一人の星少女が愛した、数多の命の物語。

 

 
Unit GrowSphereの二十三枚目、オリジナル第十七弾は「ソラの終想(ついそう) -Starlight Memory-」
太陽系をモチーフに、一生を終え白色矮星となった恒星の旅路を通して星座と宇宙の姿を描きました。
物語の主人公「ソラ」とはSolar……太陽をもじった名前です。
「色鮮やかだった彼女の庭」とはカラフルな惑星達。
主系列星として寿命となる100億年の時を生き抜き、最後に白く小さな白色矮星となった姿。
拡散し巨大な翼を広げた星間ガスという「星舟」に乗って。
ソラはこの広い銀河系を、宇宙を、何処までも静かに進みゆく――新たな星が生まれるその日まで。

 【トラック構成】
 Tr.1 星舟 -in the Stardust Ocean-
巨大な翼を深淵に広げ、静かに舟が進みゆく。白く小さなソラを乗せて。
星明かりの海の彼方へ、無数の夢と追憶を乗せて。
 Tr.2 エリダヌスの果て -End of the River-
   神話の川の終着点。河口に輝く蒼き宝石。
   旅を続ける星舟を、巨大なアケルナルの輝きがそっと見守る。
 Tr.3 巡り生まれる光 -Waltz of Trapezium-
   1600光年の向こう。鮮やかに輝く散光星雲の海に踊る星々。
   オリオンの至宝、若き星達が織り成す星空のページェント。
 Tr.4 コル・レオニスの鼓動
   天に輝く小さき獅子王。漆黒の闇を切り裂き虚空を突き進む。
   鋭く光る蒼の瞳は、威厳に満ちたレグルスの象徴。
 Tr.5 ソラが望んだ空 -Over the Milky Way-
   天の川銀河――それがソラの故郷。星仲間の輝きが彩る、激しくも静寂に満たされた世界。
   青空を知らぬ彼女にとって、望む空とは宇宙そのもの。
 Tr.6 那由他の祈りを謳う幽冥(ゆめ) -Old Home, Lost Dream-
   かつてソラの庭には、無数の惑い人とそこに生まれた数知れぬ命がいた。
   百億の刻を数え積み重ねられた彼らの追憶は、星舟と共に次なる目覚めを祈る。
 Tr.7 哀しみのオルフェ -Lyra of Hermes-
   星舟は進む。目指す先にはヘルメスの琴。
   オルフェウスが奏でる亡失の哀しき旋律は、琴星ヴェガの子守唄。
 Tr.8 ヘリオスフィアの揺りかご
   星の息吹が形作る恒星風領域――ヘリオスフィア。吹き荒ぶ銀河の荒波から守られた星の庭。
   長い時をかけて惑い人と無数の夢が生まれる為の、それはきっと宇宙の揺りかご。
 Tr.9 137億年の伝言 -the Day the Universe Began-
   始まりは虚無。原初のエネルギーだけが高次に織り成す無意識の世界。
   拡散し離れゆく無意識が互いを繋ぎ止める為の物質と言葉。それが宇宙という定義。
 Tr.10 開闢の彼方 -Synphonic Garden-
   限りなく、果てしなく。漆黒の海に広がりゆく無限の輝き。
   解き放たれた宇宙がいつの日か辿りつく時の彼方には、どのような光景が待っているのだろうか。
 Tr.11 ソラの終想(ついそう) -Starlight Memory-
   宇宙(そら)より生まれ、宇宙に還る。彼女の旅は次なる生の始まり。新たなる記憶の始まり。
   優しき星少女――ソラが愛した、これは数多の命の物語。


【作曲・イラスト・設定・ジャケットデザイン】
諌月 呉霞 / Unit GrowSphere
【頒布価格】
500円( 予定 )

2010/8/14(土) 、コミックマーケット78(二日目)にて頒布予定です。
東コ-33b「Unit GrowSphere」

 [ 全曲クロスフェードサンプル( mp3 ) ] 


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